一気に暖かくなった日曜の今日。
桜を見に行った。
といってもほんの近所の土手まで。
普段は澱んだドブ河も、このときばかりは
ほころぶ桜が周辺の景色を一変させる。
土手に沿った小道には
お弁当やお酒を持った人たちがところどころ輪を作っていて、
桜とその向こうに広がる青空を、見るともなしに見上げていた。
桜が綺麗なのは、一年のうちのほんのこの一瞬でしかない。
だからこそ私たちは、こんなにも桜に魅せられるのだろう。
桜の土手を歩きながら頭の中に流れていたメロディは
森山直太朗の「桜」ではなく、コブクロの「桜」でもなく、
グループ魂の「さくら」!!!
……そうじゃない、そうじゃないでしょっ!!
もとい、頭の中に浮かんだメロディは
斉藤和義の「桜」なんである。
※とはいえ、グループ魂の「さくら」も絶品。「TMC」というアルバムに入ってて
桜とはまったく関係ないです。笑いを求めている方にオススメ。
斉藤和義の「桜」はアルバム「FIRE DOG」に収録されていて
とっても美しいメロディーにとっても美しい詩がのった名曲だ。
詩だけを見るとそこに明確なドラマがあるわけではないけど、
メロディーがドラマチックで、聴くたびに美しい印象が塗り重ねられていく。
この曲は、ドラムとピアノが効いたアレンジがものすごく好きなのだけど、
驚くなかれ、ドラムを初めとする楽器すべてを
斉藤和義が自演しているのであった。
この曲を聴く限り、せっちゃんの
「おいらホントはドラマーなんだぜぃ」っていうお決まりのセリフは
ギャグじゃなかったんだな、と素直に思えたりする。
で、その天上的に美しい「桜」のメロディーを頭の中で思い浮かべつつ
土手を歩いていると、
自転車に二人乗りした若いカップルが、スッと横を通り過ぎていった。
そよ風に舞う桜吹雪。すいすいと自転車をこぐ男の子。
後ろにちょこんと横座りした女の子。
美しい風景である。
するとその行く手10m先にジョボジョボと勢いよく立ちションをするおじいちゃん。
そうよねー、お花見でビールしこたま飲んじゃったのに、トイレないもんねー。
私 「今のカップルさぁ、絶対あれ見たよね」
夫 「見たんじゃね?」
私 「気まずくない?」
夫 「気まずいんじゃね?」
そんな馬鹿話をしながら土手を歩くうちに日が暮れてきた。
せっちゃんが「桜」の中で歌っているように、春の夕暮れは少し寒い。
私は冷たくなった指先を温めるために
夫の上着のポケットに自分の片手を突っ込んで、
少し遠回りな道を選んで家に向かった。